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最高裁判所第一小法廷 平成8年(行ツ)54号 判決 1999年6月10日

上告人

吉澤京夫外一名

被上告人

立川税務署長

吉原利弘

右指定代理人

北島孝昭

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人和田良一の上告理由について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認するに足り、右事実関係によれば、被上告人所部職員が実地調査をし上告人らに対して申告内容が不適正であることを指摘して修正申告をするよう促し、これに応じて本件修正申告がされたというのであるから、国税通則法六五条五項にいう「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当しないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

上告人らの上告理由について

相続財産に属する特定の財産を計算の基礎としない相続税の期限内申告書が提出された後に当該財産を計算の基礎とする修正申告書が提出された場合において、当該財産が相続財産に属さないか又は属する可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出したことを納税者が主張立証したときは、国税通則法六五条四項にいう「正当な理由」があるものとして、同項の規定が適用されるものと解すべきである。しかしながら、上告人らが本件において「正当な理由」がある根拠として主張立証する事実をもってしては、いまだ本件不動産が相続財産に属さないか又は属する可能性が小さいことを客観的に裏付けるに足りる事実を認識して期限内申告書を提出したことの主張立証として十分とはいえず、これに原審の適法に確定したその余の事実関係を併せ考慮しても、上告人らに「正当な理由」があったと認めることはできない。これと結論において同旨の原審の判断は、是認するに足りる。また、右事実関係の下においては、所論のその余の点に関する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官小野幹雄 裁判官遠藤光男 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄 裁判官大出峻郎)

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